その建築材料は

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その建築材料は

あなたはごぞんじですかな、アインシュタインはまちがっているということを、それにまた、或る物体と力とは光よりも早い速度で動きうるということを? 適当な補助装置さえあれば、わたくしは時間の中を行ったりきたり動けると思うしAmway呃人、遠い過去や未来の地球をこの目で見たり、この手で触《さわ》ったりできると思います。あの生きものたちがどれほど深く科学を発展させているか、あなたには想像もおつきにならぬでしょう。彼らには、その生きた心身を使ってなしとげられないものは一つもありません。わたくしはよその惑星にも、いや、よその恒星や銀河にも行ってみるつもりでおります。最初の訪問先は、あの連中のうようよいる最寄《もよ》りの世界で、ユッグゴトフ惑星です。これはわれわれの太陽系の一番はずれにある妙な暗黒の球体で――地球の天文学者には未知の惑星です。でもわたくしは、あなたに手紙でこのことはお知らせしたはずです。適当な時間に、よろしいですか、その惑星の生きものは、思考の念波のとうとうたる流れを、われわれに向かって発信してその存在を気づかせるようにしたり――また、おそらく、人間の同盟者のひとりを使って、科学者に助言を与えたりしております。
 ユッグゴトフには壮大な都市がありますが――この都市は、いわば台をいく段にも積み重ねた大きな塔の形をしており、、あなたにお送りしようとしたことのあるあの黒い石です。あれはユッグゴトフからきたものです。太陽の光も、その惑星ではふつうの星と同じように、いっこうに明るくありませんが、そこの生きものは光を必要としないのです。彼らには、別のもっと鋭敏な感覚があって、大きな屋敷や寺院に窓がついて黃斑病變症狀おりません。光は彼らを傷つけたり妨げたり、混乱させたりさえしますが、それも、彼らのそもそもの発生地である時空外の黒い宇宙には、光がまったく存在しないからなのです。ユッグゴトフへ出かけることは虚弱な人間なら気ちがいになりかねません――でも、わたくしは行くつもりです。コールターの黒い河が流れている上に架かっているのは、神秘的なサイクロプス式(巨大な石をモルタルを用いずに積んだ太古の遺跡に見られる石積み法式)の橋で――これはそこの生きものたちが、究極の虚空からそこへ飛来してくる前にそこに住んでいた、つまりは絶滅して忘れられてしまったユッグゴトフの先住種族の建てたものですが――そういう風景を見たら、どんな人でも、ダンテやポオのようなすばらしい詩人になりますよ、ただし、自分の見たものを語るあいだだけでも正気でいられれば、の話ですが。
 だが、肝に銘じてください――その菌類《きんるい》庭園と無窓都市の暗黒世界は、じつは恐ろしいところではありません。恐ろしいように思えるのは、われわれにだけです。おそらくこの地球の世界も、原始時代に彼らが初めてここを探険したころは、彼らにはやはり恐ろしく思われたでしょう。あなたもごぞんじのように、彼らは、神話的なクトゥルフの時代が終わるそのずっと前に、もう地球へきておりましたし、アール・レー暗礁がまだ水面よりも上に出ていたころのことを何でもよく憶えております。彼らは地球の内側にもいたことがあります――そこへ通じている抜け穴があるのですが、それを人間はまだ知りません――その抜け穴のいくつかが、それこそこのヴァーモントの山の中にもあるのです――そしてその地面の下に、未知の生きもののいる偉大な世界がいくつかあります。例えば、青光りのするク・ヌ・ヤン、赤光りのするヨトフ、それに、光のない暗黒のヌ・カイといった世界が。あの恐るべきツァトホッグァがやってきたのはヌ・カイからなのです――ほぉら、あの一定した形のない、蟇蛙《ひきがえる》のような生きもので、これについてはプナトニック写本、「死霊秘法《ネクロノミコン》」、およびコモーリアム神話群のなかに述べられており、それらの書類を保管していたのはアトランティス島の高僧クラーカッシュ・トンでした。
 しかし、それについては、あとでゆっくりお話しいたしましょう。いまはもう四時か五時にちがいありません。鞄から荷物をお出しになって、少しお食事をなさり、それからここへお戻りになって楽しいおしゃべりをなさったほうがよろしゅうございましょう」

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