イトリイ家や

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

イトリイ家や

芸術家や夏の避暑客がここにおしかけることはない。二世紀まえ、魔女の血筋、悪魔崇拝、不思議な森の存在といったものが本気で信じられていた頃には、一般にこの地を避けるもっともな理由があった。しかるにこの分別ある時代においても――一九二八年のダニッチの恐怖の事件がこの村や世界の平安を心にかける者たちによってもみけされて以来――人びとははっきりした理由もわからないまま、ダニッチを忌避するようになっているのだ。おそらくその理由の一つは――事情を知らない外部の者にはあてはまらないとはいえ――昔からの住民がいまでは胸が悪くなるほど堕落してしまい、ニューイングランドの多くの孤立した場所ではよく見うけられる、退化の道をたどりつづけていることだろう。彼らは自分たちだけで一族を形成し、精神および肉体の両面において、頽廃《たいはい》と近親結婚の明瞭な特徴をおびているのだDPM度身訂造。平均的な知性が痛ましいほど低い一方、彼らの行状の記録を見れば、歴然たる悪行、なかば秘められた殺人、近親相姦、いいようもない暴力と背徳の行為は枚挙にいとまがない。一六九二年にセイレムからやってきた、紋章をつける資格をもつ二、三の家を代表する古い家系の者たちは、どうにかあまねく広まる衰退をまぬかれてはいるものの、多くの分家はあさましい住民のなかに埋没して、その名前だけが自ら辱《はずかし》めている家柄を示すただ一つの鍵にすぎなくなってしまっている。ウェビショップ家のいくつかは、まだ総領の息子をハーヴァードやミスカトニック大学に進学させているが、そうした息子たちで、自分や祖先が生まれた、朽ちかける腰折屋根の住居にもどってくる者はほとんどいない。
 最近の恐怖にかかわる事実を知っている者であろうと、ダニッチにどのような問題があるのか、はっきりいいきれる者は誰もいないが、古い伝説が告げるところによると、かつてはインディアンの邪悪な儀式や秘密の集会がとりおこなわれ、大きな丸い山から禁断の影の存在が召喚され、荒あらしい狂乱の祈りが唱えられると、それに応えて地底深くから大音響がしたという。一七四七年には、ダニッチ村の会衆派教会に新しく赴任したアバイジャ・ホードリイ師が、悪魔やその眷族《けんぞく》の存在を間近に感じとりながら、注目すべき説教をして、そのなかでこういっているDPM點對點
 
[#ここから1字下げ]
 認めねばならぬことなれど、魔物どもの忌《いまわ》しき一団のかかる冒涜《ぼうとく》的なる行状、周知の事実なれば、否定することあたわず。砂漠の悪霊アザゼル、ブズラエル、はたまた悪魔ベルゼブル、ベリアルの呪われたる声の地底より聴かるること、いまや十を越ゆる信頼すべき者の証言あり。我もまた二週に足らざるまえ、吾が家の背後なる丘にて、邪霊どものまったく紛れもなき会話を耳にいたし、唸《うな》り、揺れ、まさぐり、ひっかき、はぎしりするがごとき、この世のものの断じてあげざる音あり、ただ黒魔術によってのみ見いだされ、悪魔そのものをおいて開くる者なき洞窟より発するに相違なしDPM枕頭

PR